1日1回2錠での治療が可能ですが、生涯にわたる継続治療が必要となります

現在、日本では①核酸系逆転酵素阻害薬(ジドブジン、ディダノシン、スタブジン、ラミブジンほか)、②非核酸系逆転酵素阻害薬(ネビラピン、デラビジルン、エファビレンツ、エトラビリン)、③プロテアーゼ阻害薬(サキナビル、リトナビル、インディナビルほか)、④CCR5阻害薬(マラビロク)、⑤インテグラーゼ阻害薬(ラルテグラビル)という5系統、21種類のエイズ治療薬が認可されており、保険診療で治療を受けることができます。

治療法の中心となっているのは、核酸系逆転酵素阻害薬から2剤と非核酸系逆転酵素阻害薬から1剤、もしくは、プロテアーゼ阻害薬から1剤、もしくはインテグラーゼ阻害薬から1剤を併用したHAART(多剤併用療法)です。従来、1日18条もの薬を5回に分けて服用しなければなりませんでしたが、今日では1日1回2錠での治療が行えるようになりました。

しかし、HAARTをもって治療にあたっても、HIV感染症を治癒させることはできません。治療の目的は、薬の投与でHIVの増殖を抑えてエイズが発症することを防ぐことにあります。

エイズを発病する前に抗体検査でHIV感染を早期に発見でき、早い段階でHAARTによる治療を受けられれば、エイズの発病はほぼ抑えることが可能になりました。現在の治療薬を服用している患者の余命は25歳を起点にして考えた場合、40年ほど延びたと推定されています。HAART搭乗前の平均余命が約7年だったことを考えると予後は大幅に改善されたといえます。

しかし、薬を飲むのを止めたらHIV感染症は進行するので、HIV感染者は生涯にわたって薬を服用しなければなりません。また薬を飲み忘れると、薬剤に耐性を持ったウイルスが出現したり、毒性が強い薬剤の長期服用で体形が変化したり、脂質異常症になるなどの問題も出ています。

その結果、HIV感染者は、エイズで亡くなることはなくなりましたが、長期にわたる脂質異常症から心筋梗塞で死亡するリスクが懸念されています。さらに、飲み忘れは重大な結果を招きかねないことから、長年に渡って精神的な緊張を強いられるなどの問題も起きています。

HIV感染症の治療は、1ヶ月約20万円かかります。健康保険が適用されるので自己負担は3割で済みますが、それでも月6万円の負担が生涯にわたって続くことになりますので、経済的な負担は決して小さくありません。

ページ先頭へ戻る