他の性感染症があると局所粘膜に炎症が起こるため、HIV感染リスクが高まる
HIVは粘膜を通じて感染しますが、クラミジア、淋病、梅毒などの他のSTD(性感染症)も同様に粘膜を介して感染しますので、同時に複数感染することも決して珍しくはありません。
セックスパートナーが複数いる人は、HIV感染症を含めたこれらのSTDに感染しやすい生活をしているといえます。同時に症状の軽いSTDを2つ、3つ発症することもあれば、最初に罹ったSTDがHIV感染症ということもあります。
HIVと他のSTDを語るうえで重要なことは、STDに感染すると局所粘膜に炎症が起こり、HIVの感染リスクが最大で5倍も高まるということです。さらに炎症部位に潰瘍がある場合には感染リスクは、健康な粘膜の人に比べて50~300倍にもなるというデータがあります。
STDに感染することはHIVの感染率を高めるだけでなく、HIVに感染することで他のSTDの進行も早くさせます。携帯電話やインターネットを通じて男女が出会う場所が増えたこと、オーラルセックスやアナルセックスなど粘膜が傷つき、STDの感染リスクが高い性行為が一般のカップルにも普及しています。
1回のセックスでHIVがうつる確率は0.3%とされています。取るに足らない数字のように思えますが、セックスは一部の人が行う特殊な行為ではなく、日常生活で当たり前に行われる営みです。したがって、輸血、ドラッグの静脈注射の打ちまわし、母子感染などの他の感染ルートに比べて圧倒的に感染者が多くなっており、セックスでHIVに感染する人は全世界で毎日1万人もいるとされています。
HIV感染も含め、粘膜を介するSTDを予防するためには、コンドームを使用するようにしましょう。かつてはエイズ天国と揶揄されたタイやブラジルなどでは、コンドーム着用率100%を目指した運動によって、感染者を大きく減らすことに成功しています。